- 作者: 金田一蓮十郎
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/02/18
- メディア: コミック
- 購入: 5人 クリック: 89回
- この商品を含むブログ (65件) を見る
「平気だと思ってたのに、男の子とキスする時には無意識に体が硬直してしまっている」なんてエピソードは、非常に真に迫っていて痛々しいものがありました。だから、それなりに調べるなり想像力を巡らせるなりして描かれた作品なんだろうとは思うのですが……
うーん、でも私は、悲恋とか片思いとかばっかりで、ちょっと(´・ω・｀)ｼｮﾎﾞｰﾝとしてしまいました。
この本では「同性愛の恋にハッピーエンドはない」って、どの登場人物たちも思ってるんですよね。同じクィアな話でも、”戸籍上では男女のカップル”の話にはハッピーエンド的なオチがあるのに、他の完璧に”女性同士”な話には、ラブラブでハッピーな結末は用意されていない。現実に同性愛者が生きているんだ*1！（現実でも）同性愛のハッピーエンドは実現可能だ！っていう点がスッパリと忘れ去られてるんですよ、この作品。
とはいえ、たしかに、異性愛でハッピーエンドを目指すよりも、実際問題として困難や苦労がある可能性・確率が高いのは否めないでしょう。
ただし”二人は結婚して幸せに暮らしましたメデタシメデタシ”みたいな単純な”ハッピーエンド”が、異性愛においても本当にハッピーなエンドかどうか、私には疑問ではありますが。つーか、結婚なんて、ただの段階というか、通過儀礼にすぎないだろ、社会（日本政府）に親から独立して戸籍（家）を持てる一人前の人間だと認めさせるためのさ。
うん、やっぱり、少なくとも、そういう視点・問題意識みたいなものを作者が持っているとは、この本からは感じられないかな。”戸籍上は男女のカップル”の話は、まんまと「結婚して子供も作っちゃおうかなメデタシメデタシ」で終わってたしね。知らんのかね、子無し要件。
不倫の恋にやぶれたＯＬさんの心の傷をいやすために、同僚のＯＬさんが恋人ごっこをしてあげる”なんちゃってレズビアン”な話があり*2、その話の中で、その恋に傷ついたＯＬさんが「ハッピーエンドが読みたいのよう！」と訴えていたのですが、私は「だったらＢＬ読めばいいのに」と思いました。
ＢＬでは例え死にオチとか破滅的な終わり方をしても、基本的には受けキャラが愛されて、もしくはちゃんと二人の思いが通じて終わるように思います。気持ちがスッキリしないままってことは、あんまりないんじゃないかな。
やおい（ＢＬ）は創成期から今の爛熟期(たぶん)にかけて、内容の傾向が変わってきてるんじゃないかなと私は思っています。大雑把にとらえると、「（俺は男が好きなわけじゃない、でも）おまえが男でも構わない！（おまえの性別なんか関係ない！）おまえだから好きなんだ！」から「男が好きだ〜！おまえが好みのタイプなんだ〜！」へ、許されざる恋・禁断の果実な世界から男は男を愛しているのが当然の世界へと、どんどんオープンでハッピーな方向に変わっていったように思います。
そう考えると、まだ百合世界は発展途上だってことなんでしょうかね。私としては、はやく百合もＢＬくらい成熟してくれるといいなと思いますよ。今のＢＬは「男なら嫁げ！」みたいな世界までいっちゃった(らしい[要出典])ですからね。だったら、いっそ百合は「女なら娶り合い！」でもいいんじゃないかと（娶り合い＝お互いにお互いを娶る）。その方がわかりやすいし、直截的で実用的で爽快だし、読み手も気分がいいんじゃないかと思うのですが。それとも、百合の享受者は、この作品みたいに、悶々とした悲恋のが好きなのかなぁ。娶り合いみたいな（アホＢＬ的な）話も需要はあると思うんだけど。
ちなみに、Wikipediaの「レズビアン用語」の「百合」の定義↓。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%BA%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%B3%E7%94%A8%E8%AA%9E
ユリ（百合）
「百合族」のような用いられ方をし、レズビアンを表わす隠語であったが、現在では実際の女性同士の恋愛ではなく、女性同士の恋愛を扱った娯楽作品、または娯楽作品で描かれる女性同士の恋愛や友愛をあらわすことが多くなっている。レズビアンの中でもおたく（タクレズと呼ばれる）は少なくなく、その中には腐女子もいるが、娯楽作品としては百合よりもやおい、ボーイズラブを好む者も多い。 *3
なんだ、わたしだけじゃないんだ、女性(同性)が好きでＢＬが好きなのって。
